高柳恵里 「Little Prince」 永田芳子 そろそろ毛玉の時期が来た。セーターはまだ薄手の物しか袖を通していないので大丈夫だが、ひざ掛けや座布団カバーには既にちまちまと出来始めている。生地が痛むので毛玉刈り機は使わない。何かのときに、まぁこんなもんかな、と思えるだけ指で毟る。丁寧な人はきちんと鋏で切るらしい。 高柳恵里さんの「Little Prince」という作品がある。2005年、大阪府立現代美術センターで行われたストック・コラボレーションvol.2という展覧会でSAI GALLERYが展示していた。その時見たきりなのでおぼろげになっているが、青い毛玉の毛足の部分を接着剤でいくつも留めて、確か円錐のような形だったかに仕立てた、ちいさな立体だ。 ほわほわの点で出来たそれは吹けば飛ぶようで、アクリルケースに守られた様子や稚さは可愛らしいような凛々しいような、なるほど、王子様かもしれないなと少し可笑しかった。それ以来毟った毛玉を見ると、王子様の素。と思ってしまう。 そういえば初対面の時に、一体どうしたのかというぐらい大量に毛玉の付いたセーターを着ている人がいた。あれだけあれば王子どころか、彼を襲う化け物だって作れるだろう。黒いセーターだったので色味もばっちりだ。今でも着ているのだろうか。もう化け物の素は落ちたろうか。