和光大学 米子匡司 11月30日、夕方。 新宿から小田原線に乗って、鶴川駅で下車。 駅から住宅地を抜けて15分ほど歩き、会場の和光大学に到着しました。 学内では美術展のような催しが行われているらしくて、ところどころにそれらしい展示品があるものの、時間も遅いからかあまり人はいなくて。 大学の掲示板には、深夜校舎のテラスで騒いだ事で住民から強い苦情がきたとの注意の貼り紙(今後テラスの使用について考えます)や、サークルのお知らせ(みんな初心者からはじめました・空手部)、北朝鮮の韓国攻撃に関するポスター(北朝鮮の攻撃に断固抗議します)が貼られていて、まるで僕の想像する大学というものの見本のようです。 会場は、新しい校舎にある大きな食堂の机を端に寄せただけで作られていて、他に出演するグループのリハーサルが行われています。梅田哲也は道具を準備していて、テニスコーツは打ち合わせ中。 イベントは、出演者でもある和光大学の学生の方が企画しているらしく、進行の緩やかさだったり、会場の雰囲気だったり、なんとも大学のイベントらしい、とても牧歌的だけど、刹那的なところもある、穏やかなような不安なような空気が流れていて。 そんななか、先生らしい方が「それ、カメラ、ニコンですか。D5000ですか。僕もニコンです。ニコン仲間ですね」と話しかけてくれたものの、僕は全然カメラに詳しくないもので、それ以上話を続けられませんでした。 開場され、入って来たお客さんには学生の方が多いようでした。リハーサルから途切れなく、最初のバンドの演奏がはじまり、終わります。次の出演者は佐藤実さんという方で、同じ2つガラス管の共振周波数を増幅してフィードバックする、という説明を丁寧にされてから、じゃあやってみます、と演奏をはじめて。お話が落ち着いて上手なので、大学でもあるし、講義みたいな雰囲気でした。 佐藤さんの演奏が終わると、お客さんのうち10人程度の方が機材の仕組みを見に、彼に近づいて歓談していて、やはり何とも穏やかな雰囲気のイベントではあって、彼ら/彼女らはその流れのまま梅田哲也の設置している機材を見たり、音響機器を眺めたりしていて。 その空気が流れているまま、ふいにテニスコーツの何気ない演奏からはじまったテニスコーツ+梅田哲也のライブは、僕にとってはここのところ何度か見た彼ら3人のライブの中で一番良い内容でした。 ステージの無い会場では、その場所の空気はできごととは不可分で。そもそもステージがなければ、どこからどこまでが見るべきできごとかもわかりません。さきほど声をかけてくれたニコン仲間の先生は、随分テニスコーツに近づいて写真を撮られていて、彼を見えない事にするのも難しい。 その会場の空気に、この時のテニスコーツ+梅田哲也はすんなり混ざるでもなく、単に別の場所からたまたまやってきた、そう遠くない国から来た外国人ぐらいの距離感で、異物として淡々とパフォーマンスをはじめて、空気は行ったり来たりしながら徐々に混じり合っていくようでした。 最初、彼らは何ともアウェイに感じられたし──おそらくは、彼らのファンだったり、彼らの事をよく知っている人の割合は少なかったような気がします──そこに緊張感があって。 1時間ぐらいだったか、どうもちょっと長いパフォーマンスだったと思います。 テニスコーツは会場を横切りながら、時にはテーブルの下に隠れたり、少し離れた階段の方まで行ってしまったり、広い会場を使って演奏していて、梅田哲也は自分の楽器を演奏するほか、会場端に寄せられた机でバリケードを作ったり、照明を操作したり。 彼ら3人名義でのパフォーマンスについては、彼らが主体となって観客を呼び込んで遊びに巻き込むような、観客を同化するようなところがあって、その流れに彼我ともに乗れれば気持ちよく過ごせるし、乗れなければ退屈する、というような感想を持っていたんだけど、今回のパフォーマンスはまた違って、観客と同化せずに、でも時間の共有感はあるもので、僕にはとても良い時間でした。 ※ライブ後に、年末の梅田哲也企画イベントの告知映像の撮影がありました。 その映像は、こちらで公開されています。 http://allnightoneone.blogspot.com/