よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2011-01-28 16:56:38

【連載記事】ゴムベラとブラシ(小田寛一郎)

ゴムベラとブラシ 小田寛一郎

先日、陶磁器メーカーに勤務されている方に、最近なにか楽しかったことなどないですかと尋ねてみたところ、困っていることならすぐ思いつく、とのことで、最近困っていることについてのお話を聞くことができました。

最近困っているのは、自分の使い方に合ったゴムベラの「換え」がない、ということ。すりばちですった絵の具を取るときにゴムベラが必要になるそうで、いま使っている、前任者がどこかから買ってきたゴムベラは非常に使いやすいけれど、「換え」がない、どこにも見つからないので困っている、とのこと。絵の具を落とすために(すりばちに?)トントンとぶつけていたら、柄からヘラがとれてしまったが他によいものが見つからないので応急処置をして使い続けているそうです。どういうヘラが自分の使い方に合っているかというと、よくあるシリコン製のものだとやわらかすぎるので、適度な堅さのものがよいらしいです。また、ヘラの部分にロゴが入っていたりするとそのロゴの凹みに絵の具がつまるし、ケーキ用のヘラはなかなかよかったけれど、最近イボイボがついて使いにくくなったとのこと。イボイボというのはおそらく生クリームかなんかがくっつきすぎないようにするためのものだと思われます。柄とヘラのつなぎ目も絵の具がつまるので、できればない方がよいようです。後日、いま使っているゴムベラを見せて頂いたところ、アルファベットの小さいロゴがあったので、Pなんとかだったと記憶していますが、そのロゴらしき文字列をネットで検索してみても、確かにいまひとつ情報がありませんでした。

あと、その方にはもうひとつ困り事があるそうで、そちらも同じく仕事で使う道具の困り事です。石膏を混ぜるためのブリキバケツを洗うのに使うブラシの毛が偏って減っていくのがなんとなくもったいない気がするとのこと。アルファベットの「J」のような形のブラシでその先端にカーブに沿って下向きに毛がついているブラシだそうです。ブリキバケツの底の角にブラシのカーブと逆になるように当てて洗っているので、ブリキバケツの底の角に当たる部分(ブラシの先端)の毛だけが減って短くなる、とのこと。

お話を聞いていて興味深かったのは、道具には道具を使う人のやり方が蓄積されていて、そういう「やり方の蓄積」はブラシの例のように道具の摩耗の偏りとして現れたりすることです。あと、今回発見だったのは、面白かったことや楽しかったことではない「いままさに困っていること」を通してその人の活動を見てみるのはなかなか面白いということです。質問のやり方が増えてよかったです。


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