よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2011-03-06 14:17:50

【連載記事】宇宙人は日本から出て行きましょうね。(山本握微)

宇宙人は日本から出て行きましょうね。 山本握微

ついさっきのこと、昼ごはんを食べに、天神橋2丁目辺りを散歩していたら、20代後半ぐらいの屈強そうな男が、「宇宙人は日本から出て行きましょうねえええ!」と叫びながら歩いていた。
宇宙人っていうから電波系の人かな、と思いつつ「日本から」というフレーズが気になったのでついていきながら聞いたら、「在日は出て行こうねええ!」「アメリカや中国も出て行け、迷惑しとんじゃ!」と、宇宙人はそれらの暗喩らしいことがわかった。

下半身のジーンズは大きく破け、その下にはいている黒い股引みたいなんが露出していた。肌は浅黒く、一見浮浪者になりたてといった感じだが、上半身の身なりはそうでもない。男は、一人叫び練り歩きつつも、基本通行人にすれ違うと、誰彼関係なく一瞥しながら「宇宙人は日本から出て行きましょうねえええ!」とやった。

「関係ないやつはどっか行けえええ!」

一瞬、後ろについていっている僕のことを言っているのかと思ったが、実際にそうだった。もうしばしして彼は後ろを振り向き「さっきから何ついてきとんじゃあああ!」と叫び立ち止まった。僕に最初一瞥くれて以降、一回も後ろを振り返っていないのに恐るべきカンだ。
「何話しているのか聞きたかったから」
「お前には関係ないやろ!気色悪いんじゃ。ストーカーか!」
「(ストーカーじゃない、とは言い切れない)関係はある。話を聞きたいから、だってそっちが往来で話してるんだもの」
「お前のことなど知るか!頭のおかしい奴が叫んどる、そう思っておけばいいだろ!」
「(そう言うからには)頭おかしくないでしょ」
「知らん人間がついてくるのはストーカーやぞ!警察行くぞ」
「そうですね、行きましょう。すぐそこに交番がある。そこで話しましょう」
「何でお前と警察いかなあかんねん!」
「じゃあ、そこの喫茶店で話ましょうよ。僕がだすから。宇宙人ってどういう意味なのか聞きたい」
「だから見ず知らずのお前になんでおごられなあかんねん!」
「見ず知らずの人たちに話かけてるわけでしょう」
これを何度も繰り返す。途中、車が通りかかり、道の真ん中に突っ立ってたので、避けるよう促したら、逆に車に突っかかって「ちょっと降りてきてこの人止めてくれや」とドライバーに働きかける始末。
車は、男が正面から扉に移ったすきにやりすごしたが、人の良さそうなおじさん通行人を捕まえ「こいつについてくるなって言ってやってくれ」と訴える。
おじさんが困惑したところを僕がフォローしている隙に男は歩き出し、道を曲がった。再び僕はついていこうとしたが、すぐに見失ってしまった。が、道行く通行人が「宇宙人って言われてもねー」とか言っていたので、同様のパフォーマンスをしていたようだ。

「僕は外国人なんですが、日本を出てけっていうのはどういうこと?」という振り方なら、別のコミュニケーションができたかもしれない。が、流石に怖くてそれはできなかった。
「往来で何か訴えている人」というのはしばしば出会うけれど、叫ぶ人と道行く人には残念ながら断絶がある。彼自身が言っていたように「頭のおかしい人」で意識から切り捨て処理される。街でしばしば入るノイズに過ぎず、意味内容も伝わらない。しかし、そこに断絶があるなら、そもそも叫ぶ意味はない。
しかし、かといって、こちらから積極的にアクセスしても、先方は叫ぶ以上のことは話したがらない。普通の反対デモだって、以前、音声が割れてたから行列の先頭に「何言ってるかわからん!」と躍り出たが、「どけ!」と一蹴されてしまった。

ディスコミュニケーションの午後。


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