料理の本 永田芳子 先日知人と、どう秋を満喫しようかねと言う話題になり、食欲かお月見あたりが手頃かなと話がまとまった。なので、料理に関する本を少し。ビジュアル中心に選んでみた。 ○週刊朝日百科 世界の食べもの 創刊されたのは昭和55年、祖母が買った本。きりがないと思ったのか飽きたのかフランス編だけが家にあり、子供のころ気が向くとパラパラやっていた。料理本というよりは食文化に寄った本で、コラムも世界の機内食や絵画の中の料理について書かれているものなど、今読んでも十分面白い。写真もこの時期に発行された洋食の本の中ではかなり良いものだと思う。レストランや市場の様子から始まるのだが、食肉、特に子羊の脳(生で店先にずらっと)や、鹿の血抜き中の写真などはなかなかのインパクトがあった。 ○イタリア料理の本 米沢 亜衣 これは図書館で見つけた。装丁はクウネル等を思わせる雰囲気なのだが、写真のトーンが少し怖くて印象に残った。イタリア料理と聞くと盛り付けから陽気でパァッとしたイメージが浮かぶが、この本ではどれも暗く静かでいっそ冷めてそうに見えるページもある。スープに浸っている鶏を見たときにはローラ・パーマーを連想してしまった(確か『世界で一番美しい水死体』とかいう、本人的にはどうなんだろうというキャッチコピーが付いていた覚えがある。スチールしか知らないが)。レシピがシンプルで実用性もある。 ○Cinema Table [映画の中のレシピ] Cinevine編 おそらくこの本で取り上げられた作品の中でもっともメジャーであろう「クレイマー、クレイマー」ですら見たことがない、というくらいふだん映画を見ないので、紹介されている料理がストーリー上のどんなシーンで出てくるのかさっぱり分からない(もちろん軽い解説はあるにしても)。そんな状態でも面白く眺めていられるのは、料理を一時置き去りにしてみんなどっか行ってしまったような空気が写真にあるからだろう。ここでうっかり独裁スイッチを思い出すのは可愛らしさが吹っ飛んでしまうのでよす。ちなみに、奥付を読むとスタイリングは岡尾美代子さんだった。未だ「オリーブの呪い」が解けていないことを実感した瞬間の一つ。 ○夜想23/飽食 今の「YASO」ではなくてペヨトル工房時代のもの。1988年刊。 佐藤修という料理家のインタビューが載っていて、そこで話題になる1986年に開催されたパーティーの様子がなかなかすごい。会場に並んだ雉や猪の剥製の皮をはぐと中からよく焼けた肉が現われたり、装飾に見えた葉っぱはチョコレート、それらも喰えると気づいたお客が本当に飾りとして添えた生のザリガニまで食べてしまったり。千人ほどが集まったそうだが、いくらバブル期だったとはいえちょっと状況のケタがおかしいんじゃないのか。文中には食べる前と食べられた後の料理の写真がそれぞれ添えてあり、余裕ゼロな喰い尽くされっぷりが野蛮で素晴らしい。その衝動と、それを起こさせるものに出会った事について少しうらやましく思う。