よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2012-02-27 21:48:47

【連載記事】純粋文房具店(山本握微)

純粋文房具店 山本握微

 地方都市に行って、何か面白いおみせやさんないかな、とウロつき回っていると、まあ、そう都合よく面白い店に出会うことないのだけれど、ふと気付いたことがある。それは「文房具屋」の存在。
 大阪で文房具を買おうと思ったら、書店の併設、ホームセンター、ハンズやロフト、はたまたヨドバシカメラ、ショッピングモールの売り場、となる。勿論「文房具屋」もあると思う。小学校の前にあるような小さな店とか。或いは、同じ小さな店でも雑貨屋みたいなお洒落な感じのところとか。または、本町界隈辺りには、コンビニみたいな構えで、まあ文房具屋と同じような店はある。
 でも、それらと違う。それほど、おしゃれではない、またチビてもいない、どーんと店を単独で構えて、2フロアぐらいあるような、そんな文房具屋。
 先日、高知に行って、そこでもあった。内田文昌堂。最初は本屋かなと思った。でも、文房具屋さん。表通りに鉄筋二階建て、その佇まいからして、ただの文房具屋さんなのに、何かしら、この違和感、と上述のようなことを思った。
 で、入った。勿論、レトロとかそういうのでもなく、ごく普通。筆記具があり、ファイルがあり、はさみやのりがある。奥の方には、もう少し専門的な商品があって「未決箱」とか「提案箱」とか、やたら用途が既に限定されているようなスチールボックスがあって、誰がわざわざ買うのか、なかなか高いお値段。
 二階は、画材や紙類があった。あと、コミック用品。高知は、まんが文化に力を入れているので、或る意味ご当地的な。まあ高知に限らず、どこにもあるでしょうが。
 閉店間際に行ったので、一階のカウンター内でマイクを持って「まもなく閉店します」と館内放送していた。放送設備まである。

 そういえば、堺市にもあった。こういう文房具屋さん。その名も「田中誠文堂」。この「姓+何とか+堂」が文房具の屋号ルールか?山之口商店街の北側入り口に面して、どんと店を構えていた。
 最初、父が買い物をする時についていったんだっけか。こんな大きな文房具屋さんがあったのか、と感動して、あれこれ見回ったのを覚えている。画材や紙類は、ちょっとした離れみたいなところにあって、そこへ移動するのも、普通の店じゃない感じがして面白かった。
 後に、ここで度々、厚いケント紙を買った。それでよく工作した。中学生の頃から自作の手帳を使っていたが、表紙となるケント紙はここで調達していた。このケント紙で、高校入学の頃、定期入れも作った。文化祭の展示、感想を入れるための箱もこれで作った。養護学校交流会の時、双六に使う大きなサイコロも、これで作った。僕が知る限り、最もぶ厚い紙はこれだった。僕は手先を使う物造り全般苦手で、やる気も起こらないが、紙ぐらいなら何とかなるだろう、と思っていた。
 また、高校三年生の頃、最初で最後の文芸部に出た予算は、ここでだいぶ費やした。先ず、大きなホッチキス。50枚くらい止めれるタイプのやつで、今でも重宝している。これは確か、取り寄せしたんだっけか。二階でカタログを見たのを覚えている。あと、A3サイズの紙が入るケース。これは最近使っていないけれど、今もどっかにある。いずれにせよ、部員は僕一人だけなので、私物の積もりで買った。
 他にも、劇団絡みで、何人かと行った記憶もある。何時、何を買いに行ったんだっけか。稽古場である青少年センターから、自転車でそんなにかからない。でも、それほど便利使いできなかったのは、閉店が早く、しかも日曜日は休みだったからだ、確か。目的を定めて行った。

 正に、思い出も思い入れもある店だけれど、数年前尋ねたら閉店していたんだった。名前からして老舗って感じだし、手堅い商売だとなんとなく思っていたのだけれどよく考えたら全然そうではない。まあ、ごく普通の時流に沿って、閉店しちゃったんだろうか。最後に、何かのためにと思って買ったケント紙は、今でも事務所にある。

 まあ……勿論、あの店で買えたものってのは、今、他で買えないわけじゃない。残念ってわけでもないけれど。ただ、高知の「文房具店」というドッシリした店構えを見て、そういえば今見かけないな、と思った次第。

※ 今調べたら、「田中誠文堂」は滋賀に会社があるとのこと。堺の店舗との関連はわからないけれど。


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