よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2012-03-05 05:29:51

【連載記事】両親の話し(藤井菜摘)

両親の話し 藤井菜摘

両親の話しをいくつか聞きました。

実家は自営業を営んでいるのですが、去年の末ごろからその店の近くに足の短い猫が二匹うろうろしてるらしいです。2匹は柄は違うようですが、二匹とも足が短いので兄弟ではないかと両親は言います。足が短いというのは、恐らくマンチカンとかそういう猫の血が混じっているのだと思います。うちの両親は特別動物が好きというわけではなくて、その話しをする口ぶりもちょっとぶっきらぼうで、けど全体通して聞いているとまんざらでもないような、そんな距離感です。私がその猫に興味をしめすと、次に帰ったときには携帯電話で動画を撮っていました。近所にはまた別の猫がいて、その猫は飼い猫風で少し大きいらしく、その猫が来ると二匹はすぐ逃げてしまうそうです。とにかく両親いわく、二匹は「あかんたれ」だそうです。特に面白かったふうでもなく、ただ日常の中で起こった事を報告するくらいの感じが良かったです。

少し前、両親が知人のお通夜に行ったという話しを聞きました。誰のお通夜かと聞くと、「ほら、あんた昔店に座ってたらお年玉1万円くれた社長の奥さんおったやんか。その社長が亡くならはってん。」とのこと。この通称『お年玉に1万円くれた社長の奥さん』は家族の中で『他人の子供に1万円もくれたお金持ち』という記録とともに記憶に残っている人なのですが、もう私の中では遥か昔のことなので顔も名前も覚えていません。話しは続きます。「行ったらな、○○の○○さんも来てたわ。あそこの服昔からよう買うてはったからな。」○○の○○さんというのは、昔近所にあった市場の服屋の人のことらしいです。「奥さん1人で来てはってな、旦那さんが車運転しててんけど、道わからんからて奥さん途中で降りてタクシーひろって来てんて。せやけど、お通夜終わるまで旦那さん結局来んかったわ。なんであんな簡単な道で迷うねんて笑ててん。しかも旦那さん携帯忘れたらしいねんけどな、ちゃんと家帰れたんやろか。」お通夜で泣いてたけど、笑けてもたという話しでした。登場人物の詳細がわからなくても面白く聞けた話しでした。

人と話すとき、その内容に少なからず自分の社会性が反映されると思います。それは精神的な距離感や物理的な距離感によって変化すると思うのだけど、できるだけそういうものを意識しない会話というのが好きです。ようするに話しても話さなくてもいいような話しが好きです。家族の間には割とそういう会話が多いように思います。


余所見