よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2012-07-12 14:36:14

【連載記事】自動車免許の合宿へいく〜その5〜(蛇谷りえ)

自動車免許の合宿へいく〜その5〜 蛇谷りえ

残り卒業試験までは、あまり日がなく、残された学科授業と模擬テストをクリアしなければいけなかった。卒業してしまって、顔見知りがいなくなったけど、また新しい人たちが入っていて、雰囲気も変わっていた。恐らく卒業が近いだろう人と残りの模擬テストについて教わる。私の場合、模擬テストを受ける時間が実質1時間しかなく、しかも、このテストの所有時間は早くても30分はかかる。明日、その一時間の間で100問中90点以上をとらないと卒業試験を受ける事ができない。失敗は許されない。うーん、プレッシャー。早くやっておけばよかった。
でも、試験を終えた人の情報によると模擬テストといっても、学校がつくってるのもなので、そんな堅いものでもなく、「デカモン」と呼ばれる学校で渡されたドリルの1ページまるまるがテストになってるらしい。しかし、テスト用紙は2部しかないから、二人以上でいくと違うページのテストを渡されることになるから、絶対に1人で受けな。と下調べ抜群。情報の集め方は、男子寮だけあってとてつもない連携っぷりだった。ドリルのあるページだけを勉強して、模擬テストに挑んだ。見事100点。他のみんな100点で合格している。

無事に路上運転での卒業試験も合格し、校長室へ向かい、校長先生から卒業証書を受け取った。「交通安全、譲り合う気持ちが大切です。」と、うんぬんかんぬんお言葉をいただき、ドラマのラストを飾るかのような展開。しかも、その校長は今私が住んでる町の親戚だし、アイコンタクトをしながら、「お疲れさま」と笑って見送られた。鳥取から大阪までの特急列車のチケットを受け取り、今までの合宿のことを思い出しながら眠った。

大阪へ帰って、次の日、門真市にある免許試験場で本免許の筆記試験を受けにいった。朝10時に受付して、13時前に試験開始。2時30分に合格発表が出る。受かればそのまま免許証の発行の段取りをし、夕方まで手続きは続く一日作業。最近テスト三昧だったし、受かるだろうと甘くみたために、惜しくも88点の2点差で、不合格。自分の受験番号が表示されてないあの感じ、いつ経験しても恐ろしい。今までのこういう安易な考えで経験してきた苦い思い出がフラッシュバックしながら、自宅へそそくさと帰る。
その次の日、再度朝から門真へいって受け付けて、試験を受ける。何度も勉強して今度は完璧だろうと、不安も抱えながら合格発表が出るロビーで眺めてると、「おい。蛇谷」と後ろから声がする。「え!」と思って、振り返ると合宿で鼻から血を出したお兄さんがいた。免停のための講義を数日受けていたらしく、今日が初日の試験だったらしい。「昨日、ひとみが受けにきてたらしいぞ。」と、Sさんのことをひとみって呼び捨てにしていることにドキッとする。「昨日、私も来てたよ」「すれ違いか!どんくさいのー。」と、電話をすちゃっとかけて、「おい、ひとみか?蛇谷が来てるぞ」「えー。まぢで!」と電話から小さく声が聞こえた。
免許証が完成したら、お茶でもしようと約束をして、夕方、門真のガストで待ち合わせをする。大阪で会うSさんは、少し女の子らしくなっていて、やわらかい印象を見せた。鼻から血を出したお兄さんとその友達と、私とSさんと、たわいもない話をして、ちょこちょこ話が通じないときもありつつも、Sさんはやわらかい笑顔をして私をみてた。
雨がやんで駅までの帰り道、「Sさんのこと、かわいすぎる!」って恋してる十八歳の男の子が自動車学校にいて、食堂で相談を受けたよ、って笑いながら話をすると、「行動がまるでなってない!若すぎる!」と言って呆れてた。かといってなんて断ればいいのか、わからず会話をしているようでもあった。私なら、どうするかなーと想像してみるけど、すぐには思いつかなかった。でも、そういう気持ちってあったよね、と懐かしくお互いうなずく。

駅に到着して、反対方向なのでもう一度お別れをする。「また会いましょうね、運転がんばってください」と言って笑顔をくれた。またどこかで出会えたら、この話のつづきを書こうと思う。免許証を手にして鳥取へ向かった。


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