よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2012-09-02 23:52:33

【連載記事】数年越しの百間(永田芳子)

数年越しの百間 永田芳子

梅田ロフトでの用が済んだので、帰る前にコーヒーでも飲んで一息つくことにした。かといって周りの店は賑々しいし、ちょくちょく寄る喫茶店はヨドバシの方なのでここからは少し遠い。頃合の店はどこかになかったっけ、と考えていたら、以前大阪造形センターをやや越えたあたりで一休みした事を思い出した。

小体なつくりでカウンターが5席ほど、テーブルが4人席・2人席とりまぜでやはり5つほど。でこぼこした白い柱にニッチが作ってあって、中には銅版で出来た小人の人形や額に入ったイコンなどが飾られている。多分アンティークな雰囲気として置いているのだろうが、装飾品はどれも安っぽい感じで少々ツメが甘い。
まあ、さして洒落たところへ行きたい気分でもなし、値段も普通だったしあそこでいいや。前に座った席は扉の近くで、客が出入りするたびに背中やらお尻がスースー寒かった。今日は違う席空いてるかな。と歩き出したはいいが、何がなし記憶の感触が頼りない。少しずつ気弱になって、信号待ちの間に、店の周辺はどんな様子だったのか思い出してみた。
確かもう暗くて、隣にそこそこの規模の温室があって、中の電気は消えていたけど街灯を透かして見える吊り鉢やなんかがきれいで、目印にするならそれくらい             ん? 温室?
そこでようやく夢の中で入った店だと判った。信号は渡らなかった。その後どうしたかは忘れた。

こんな出来事を、内田百間(けん、の変換が出ない)を読んでいる時に思い出した。
高校生の頃、「サラサーテの盤」というタイトルが気に入って読んでみようとしたが、パラパラやってもいったい何の話やら見当がつかなくて、買わずにおいてしまった。それでも気にはなり続けていたし、好きな作家が何人か挙げているしで最近ようやく手を付けた。
で、数冊読んでみたが口の中から毛が生えたり、死んだはずの同級生とお酒を飲んで近況についておしゃべりしたり、やっぱりおかしな事ばっかり書いてある。
小説、随筆、と章を分けてあっても、口調が変わらないので油断すると、ん?という運びになる。夜見る夢もそんな風で、起きている頭からすれば無い!と言いたい事も、その中では「そのような事」として対処していたりする。台湾(行ったことない)の食堂の通貨がおはじきだった時も、地面に降りて休むときは折り紙を戻すようにパタパタと広がって薄くなる鳥を見た時も、珍しいと感じはしたけど、そのような理なのでそのように捉えた。それと少し似ている。

文庫巻末の解説など読むと、夏目漱石のお弟子さんだったらしい。どうやら私の好きなタイプの変人だが、漱石にとってはどう見えていたんだろう。そのあたりを伺える物を知っている方、どうぞご一報下さい。


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