よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2012-11-01 14:48:11

【連載記事】対岸の異国(境隼人)

対岸の異国 境隼人

ぽっかりと暇が空いた。
このかたいつだってもてあましている暇だけれど、唐突に降って湧いたので如何せん。何だか口寂しくも冷蔵庫も戸棚ももぬけのカラだったので仕方ない。暇をひけらかしに外へ出ることにした。

淀川の土手で朝から黄昏れるのも辛気くさいので、今日は橋を渡る。渡るぞ。思えば中津に越して数年、生活テリトリーとしては梅田から中津間を全く出ていない。地続きの道はいくらでも歩くのだけれど、川の向こうはいつも異国を見るように対岸から眺めていたのでなんだか遠いのだ。

なにぶん用事があるわけではないのでカメラと財布くらいを持って部屋を出る。向かいの小学校は授業中で静か。玄関に猫は居なかった。土手を廻って高架下をもぐってふらふら見物しながら橋の方へ。

「一級河川 淀川」
記念に一枚パシャリと撮った。ロードワークのお兄さんとバスを待つおばあさんくらいが目に入る。

中津と対岸を結ぶ十三大橋は阪急電車の線路と併走している。平日なので道路は運搬車やら社用車が多いし電車も本数が多いので、特に静かということは無い。ぼぉっと過ごすなら土手のほうが向いているなと思ったが、今日は歩く気分。なぜかイエローサブマリンが口をついたのでカラカラ歌いながら渡る。潜水艦いいな。川はきっと浅いけど。

680メートルほどを20分くらい掛けてちんたら渡り着きました十三。思えば賃貸屋に相談に行ってた時にも「川の向こうなら同じ条件の部屋でも一万くらい安くあるヨ」と勧められたのだけれど川を渡る億劫さにこちらを採ったのだ。ただ実際歩くと距離としては大したことはなく、梅田へ歩く方が信号分掛かるくらいではないかしら。
実際十三に来たことが無いというわけではないのだ。ただ川がそこに横たわっているだけで随分見え方が違うという、気分の問題。

折角だから同じように橋の端で写真でもと思って踵を返すと死角に在った低いコンクリートの小屋根に額を打った。



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