よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2012-11-07 23:50:20

【連載記事】尾崎放哉句集(永田芳子)

尾崎放哉句集 永田芳子

尾崎放哉は、劇作家の宮沢章夫が著書のいくつかで書評を書いていて興味を持った。そこで紹介されていたのは、
「ひげがのびた顔を火鉢の上にのっける」 
「爪切ったゆびが十本ある」 
「墓の裏に廻る」 
といったもの。どうも、それまで自分が持っていた俳句のイメージと違う。なんだろう、ということで句集を買ってみた。
始めは、前に挙げたような妙なものばかり拾って読んでいた。それに慣れると、ほかの句に目が止まるようになっていく。

最近なら「沈黙の池に亀一つ浮き上がる」。
沈黙の池とはどういうものだか知らないが、4月に安治川の傍を歩いていて亀が浮いているのを見た。伸ばした四肢がなんだか白っぽい色をしていて、首が波に合わせてふるふる、ふるふる、とゆれているように見える。
よもや、と思ったが見続けていても様子は変わらず、同じくそれに気付いた通りすがりの女の人と「あの、亀」「あ、なんか、ねえ」「ねえ」と、もやっとした話をして別れた。

「宵のくちなしの花を嗅いで君に見せる」。 
これもこのあいだ見つけた。あんな甘いものを誰に。梔子は梅雨から夏に咲く。あちこちに植わっているので、今年も自転車や徒歩で何度も前を通った。冬の寒さの中でならあの匂いもすぐに離れるのだろうが、湿気や何やを含んでもったりとついて来る。こちらの機嫌によっては疎ましく感じるときもある。いつもいつもなぜこんな時期に、と思う。

手元にあるのは彌生書房の単行本で、選集ということもありそんなに厚くない。おおよそ10年近くこの1冊をパラパラやっているが、長く楽しめている。



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