よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2012-11-28 12:36:52

【連載記事】アルクアラウンド(中島彩)

アルクアラウンド 中島彩

夜にだけ空いている児童書中心の私設図書館にでかけて、帰り、終電がなくなった。
タクシーに乗って帰ってもいいのだけど、とりあえず歩けるところまで、歩き出す。

阿倍野から天王寺まで、建設中の完成すれば日本一の高層ビルとなる「あべのハルカス」を目印に歩く。現在、鉄骨は既に300mに達しており、空にすっくとのびたそれを見つければ、方角が分かる。道は中学・高校時代の通学路とも重なるが、再開発中の地域でもあるので、懐かしさと違和感が合い混じる。

天王寺からは環状線外回り沿いに歩く。
若干下り坂になっていき、下がりきったところで賑やかさと荒廃が漂う新世界の商店街、そのまま歩いて新今宮の駅がある。駅前の西成あいりんセンターの周辺にはブルーシートや段ボールハウスが並んでいて、なるたけ静かに通り過ぎるようにする。連れの友人の牽くベビーカーが、アスファルトの道をゴトゴト鳴らせていて、寝ている人たちの眠りを妨げなければいいなと思う。
また少し行って、スーパー玉出に立ち寄る。
そういえば、最近見た「100 osaka展」とかいう展覧会で大阪を感じるところとして玉出をあげていた人が二人いたなと思い出す。深夜0時を過ぎているのにやたら明るくて、この暴力的な感じは確かに大阪らしい。隣接した自販機コーナーで、缶チューハイやコップ酒が100円くらいで売られていて、これも大阪というか、このあたりらしい。
玉出で買った缶チューハイを片手に、再び歩き始める。

ここからはよく知らないエリア。看板に「中開」とあって、此花の自宅近くに「大開」というところがあるから(大開は福島区だけど)、何を開くか知らないけど、まあつながっているんだろう。
次は「北津守」。この地名も聞きはするけど、よく知らない。そこから国道43号線沿いに歩く。
43号線は自宅の近くにも通っているから、それできっとたどり着くだろう。
車道と歩道は分けられているが、両方とも高架の道だ。壁越しの車道では車が行き交う音がするけれど、歩道は全然人通りがない。
スロープを上がって高架上にいるときは、街を見渡しながら歩く。私たち以外他に誰もいなくて、街を独占している気分になる。
大きな交差点に近づいてスロープを下れば、走る車や店の灯りや寝静まった家が同じ目線に並んで、自分が夜の街の出来事のほんの一部であることを思い知らされる。

何度かスロープを上がり、下がり、川を渡り、見たことのあるあたりにたどり着く。
弁天町。
通ったことのある商店街。
「ORC200」、高さ200mの高層ビル。あべのハルカスみたいに空にのびていて、見つけて、安心する。
弁天町から少し歩き、スロープを上る。
ここからは自宅から九条の方へ行くのに普段通るルートだ。安治川を渡り、左手に大阪港周辺の工場の灯りが煌煌と見える。右手の麓には24時間営業のラムーの灯りが、もっと遠くには梅田周辺の高層ビルの灯りが見える。
スロープをおりると、いま住んでいる此花区。公園を抜けて、いつもの商店街を通り、連れの友人親子と別れ、自宅に着く。
午前3時。

西九条から阿倍野・天王寺間は、10年以上幾度となく移動してきたのだけど、いつも電車で、初めて歩いた。


このところ遠くへ出かけられていなくて、夢で荒地を駆け巡っていたのだけれど、いつでも旅はできるということを思い出した。つまり、目的ももたず、時間にもとらわれず、気の向くままに歩き続けること。


余所見