よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2013-02-21 00:53:04

【連載記事】害のない嘘(中島彩)

害のない嘘 中島彩

 だいぶ前に読んだのですが、害のない嘘という言葉がでてくるエッセイがあって、村上春樹が書いているのだけど、それはこんな話だった。出版社が特定した本ではなく、村上自身が選んで、なにか書評を書いてくれ、と頼まれ書かなくてはならないのだが、面白いと思う本がそのときなかったか、忙しくて新しく出版された本を読む暇がなかったかで、筆が進まない。そこで村上は架空の作家と小説をでっちあげ、その小説についての書評を書いた。多少厳しく評価したとしても、実際にはその小説も作家も存在しないわけだから、誰も傷つかない。害のない嘘。

 エッセイはまだ続きがあったのだけど、さておき、この余所見という雑誌は、見たり聞いたりしたこと、それについて考えたことを集めているもののはずだけど、ほんとにそれを見たか聞いたかを検証するシステムはない。でもそれを検証しなくてはならない必要もない。というのは、見たり聞いたりした対象そのものより、どういうものを見たり聞いたりする人がいるのか、その人たちはそれについてどういう風に考える人なのか、があらわれてくることが、たぶん、この雑誌にとって重要だからだ。だったら、見たり聞いたりしたこととして、余所見に書かれることはほんとに起こった出来事でなければならない理由はないはず。
 そんなことを考えて、これまでの記事を見ると、「これは作り話なんじゃないか」と思えなくもない記事がいくつか。あからさまに作り話っぽく読めるものもあれば、これが作り話だとしたら、この人はなかなか達者な嘘つきだなと思えるものまで。さあ、嘘つきはだれだ。

 というようなことをいちど書いてみたら、今後、余所見を読むひとが「ひょっとしてこれは嘘なんじゃないか」と思ったり、余所見を書くひとが「見に行ってないけど見に行ったつもりで書いてみよう」と画策したり、そんな風に作用したら面白いなと思ったんですが、どうでしょう。
 害になりうる記事でした。


余所見