よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2013-05-16 23:41:32

【連載記事】俑と明器、あれは。(中島彩)

俑と明器、あれは。 中島彩

世間にはいくつも美術館や博物館があって、メジャーなものからマニアックなものまで、私はその一握りも見てないのだけど、僭越ながら好きなところをあげさせていただくと、大阪市立東洋陶磁美術館は素敵だ。

それはもう展示台の高さとか、照明の明度どか、自分の姿が映り込まないガラスとか、逐一きゅんとなるんだけど、企画展示とか所蔵品とかもわりかしきゅんきゅんさせられることが多い。

で、最近見たのに中国古代の俑と明器の特集展があって、これまたきゅんとさせられた。

こんな陶器。
丸い柵の中に豚が一匹いて、その柵に半分乗っかかるような形で小屋が建っていて、その小屋の床に穴があいてる。
そうこれは豚トイレです。
上の小屋で人がした排泄物がそのまま穴から落ちて、下にいる豚が食べるという仕組み。この仕組みのトイレは現代でも田舎の方ではまだ存在してるとか。
このトイレ、なんか強いなと前から気になってて。
子どものころ、おじいちゃんちのボットン便所がすごく怖くて、時々夢に見たんだけど、これってボットンなだけじゃなくて、穴の下に豚たちがいてぱくぱく口を開けてるって、ほんと小さい子どもからしたら悪夢だろうなと。
そのトイレが陶器になってる。
しかも明器として。
(明器というのは、位の高い人が埋葬される時に死後の生活の道具として一緒に埋葬される物です。兵馬俑が有名ですが、俑は人型のもの、明器は道具を指します。)

うわあ、この明器をつくらせた人って、死後の世界でもトイレを使うことを想像したんだなと、そこまで死後の世界をリアルに考えられるって、どういう生き方をしてたんだろうと、
一.今、生きているのが楽しい。死んでもこの人生を続けたい。
一.今、生きてるのがつらい。死んでから充実した人生を送るぞ。
想像は膨らみます。

それからそれからこの陶器、緑釉猪圏(りょくゆうちょけん)と名付けられてるのだけど、英訳はpigsty(豚小屋)となってて、ニュアンスのずれが多分にあります。
これは他の陶器にも陶器以外の物にも言えることだけど、物そのもの、作られた国の言語でのタイトル、こちらの言語で訳されたタイトルと、ニアイコールどころか連想ゲームぐらい違う物になっていっているように思います。
器は鑑賞品でもあり道具でもあるから、ずれがひときわ大きくなるんでしょうか。

そんなことを考えた。以上、展覧会レポートでした。


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