よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2014-01-28 22:02:00

【連載記事】VOCE(ヴォーチェ)を見る。(中島彩)

VOCE(ヴォーチェ)を見る。 中島彩

女性ファッション誌というものがいったいどれくらいあって、それぞれがどういう位置づけなのか、どういう人が買っているのかは詳しくは知らない。きっと毎月数冊買っては比較している人や、中には研究している人もいるのだろう。
私は本屋やコンビニや美容院でなんだかんだと目を通すけれど、お金をだして買うのは半年に一回くらいという程の購買層である。
それでもなんとなく知っているのは、世代やファッションの傾向(OL系、ナチュラル系、ゴスロリ系、コンサバ系といった)、職業、ライフスタイルといった項目に応じてさまざまな種類があるということ。
たとえば10代後半から20代前半の特に強い主張のない学生やOLなら「nonno」、20代前半から後半の独身OLなら「MORE」や「with」、キャバ嬢なら「小悪魔AGEHA」、ギャル系なら「egg」など。大枠でいえばそういったところで、細分化して分類していけばきりがなく、さておき、だ。

このたび、VOCE(ヴォーチェ)を買いました。前述の分類で言うならば、20代半ばから30代前半の正統派(何が正統なのかはわからないけれど)美人を目指すメイク(化粧品)雑誌。
メイク雑誌とは化粧品やその使い方、美容法が主なトピックで、洋服やダイエット法、恋愛など他のファッション誌によく見られる要素がそれほど重要視されていないものである。
メイク雑誌として他に有名なのは「美的」や「MAQUIA」。他にも何誌かあるが、この3誌が少年マンガ雑誌で言うところの「ジャンプ」「サンデー」「マガジン」「チャンピオン」といった位置づけ。(だと思う)

で、なぜこのたび買ったのかというと、新年を迎えて気分を変えたいなとか、ファンデーションがそろそろ買い替え時かなとか、なんだか最近髪にツヤがなくなってきたなとか、忙しいのが一段落して鏡を見る余裕ができてきたら、あら、こんなに毛穴が開いてたっけとか、まあ、一言で言うと、なんとなく。
本屋をふらふらしていると、
「眉を変えれば新「旬」顔」、
「メイクで美人は作れる!かわいげ美人のコツ。」
「濃くないけど「効く!」メイク」
そんな表紙の文句につい目がいってしまったのだ。

ところで、メイク雑誌を買うのは人生で2度目。前回(にして生涯で初めて)買ったのはもう何年前か思い出せない程のことである。その間パラパラと立ち読みをしたことはあったけれど、購入して手元で精読するのとはやはり情報の受け取り方も量もかなり異なる、というのは他の洋服をメインに扱ったファッション誌よりメイク雑誌特有かもしれない。
なにしろちょっと科学的。

たとえばファンデーションの比較。メーカの異なる10種類のファンデーションを取り上げ、汗や皮脂に強いかを比較するために「人工皮革にファンデを塗布して、水と人口皮脂を滴下した時の状態を観察する」との説明があり、水と人口皮脂であろう液体をスポイトでたらした写真が10点ならんでいる。また、肌の透明感は出るかのテストでは、「中身を抜いた卵の殻に、ファンデを塗布。内側から発光体で照らした時、光がどれくらい透過するかを観察する」とあり、ライトアップされた卵の殻の写真が並んでいるのである。
ほかにも、「美利き検定」というコラムでは、美に関する基本的な知識が備わっているかを簡単な質問に読者が3択の中から答えをみつける、というかたちで問うもの。今月のテーマ「幹細胞」についてはたとえば、「日本で最初に、細胞のひとつひとつを仕分け、幹細胞だけを取り出す機器を導入し、幹細胞を培養する研究手法を確立したメーカーは?」との質問。そんなの聞いたこともないよ。

他の女性誌が、「かわいい」「きれい」といった情緒的な感覚に訴える文系的な紙面づくりであるのに対し、VOCEは「科学的根拠のある裏付けに基づいた美の確立」みたいな、書いてて自分でもよくわからないけれど、なんだか理系的な匂いがするのである。
そんなわけで情報量たくさん。編集部のヒト、大変だろうな。付録づくりに精を出して中身がおろそかな巷にあふれる幾多のファッション誌と比べると、なんだかエライなと思えてしまう。まあ、付録づくりが先行しがちなファッション誌にも、相応の事情や苦労があるのだろうけれど。

でまあ、せっかくだから新しい化粧品を買う参考にと提示された品々のキャプションを見て驚き。美容液、ファンデーション、口紅、どれもこれも5千円はくだらない。1万5千円を超える美容クリームなんていうのもざらにある。そんなの使ってたらそらきれいにもなるわな。と、スナップ撮りされたキレイな読者モデルや編集部員の写真を見て思う。
毎月何万かのお金をメイクや洋服に使い、それに見合う収入が得られる仕事をスイスイとこなし、休日はヨガや友達とランチ。
ああ、別世界だ。別世界の価値観や生き方がある。
なんてことをしみじみ思いながら、購入はあきらめて、今手元にあるものでも彼女らになんとか近づけないかなと思って、いつもより眉を少し太めに描いてみたりする。(今の「旬」顔は太め眉らしいので)
まあ確かにこんな顔の人最近よく電車で見かけるな、という顔ができる。
メイク雑誌の効用ってこんなものなのかもしれない。

というわけでしばらく(たぶん1ヶ月前)眉太めの私を見かけるかも知れませんが、驚くことなくどうぞよろしく。

(余談ですが、VOCEの前に買った雑誌は男性ファッション誌「POPEYE」で、そのときはシティボーイになろうと男物の服を着ていました。こんな風に外見だけでもいろいろと自分を変えられれるのはなかなか楽しいものですね。)


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