よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2014-04-23 01:41:20

【連載記事】マームとジプシー「まえのひ」(藤井菜摘)

マームとジプシー「まえのひ」 藤井菜摘

マームとジプシー「まえのひ」の公演を見て来た。

ここ何日か、何かを見たい気分になっていて。ちょうどツイッターのタイムラインで関西で公演をするという情報を見たので、見に行ってみました。
マームとジプシーについては、名前と演劇的な団体らしいということくらいしか知らなかったんだけど。どんなことをする人たちなのか、ウェブサイトを見てもあんまりよくわからなくて、今回の公演に関してもあまり内容について想像出来る程度の情報はなかった。ただ、川上未映子さんのテキストを使って何かをするらしくいくつかタイトルが並んだあとに、会場に合わせてセットリストを変えるとあった。ぐずぐずしてたらもうすぐ開演時間で、自転車とばして会場に向かった。

会場は味園ユニバース。千日前にあるキャバレー。初めて入った。キャバレーなので前方にステージがあって、フロアにはゴージャスな柄の入ったベルベットのコの字型のソファーが幾つも配置されている。ステージ手前にランウェイみたいに細長い空間が区切られていて、その周りを客席。客席も含めてフロアの半分くらいを使っていたかな。開演ギリギリに到着したので、もう一杯にお客さんが入っていて、係の人が開いている席に誘導してくれた。ほどなくして開演。

女の人が一人細長いスペースにやってきた。赤いコートにストールは何色だったか忘れた。BGMが小さく流れて、何かを話しはじめた。台詞っていう感じでもなくて、何か文章を読んでいる様。なるほど、朗読なのだなとわかった。内容を追おうと聞く。すぐさま情景が浮かんでくるような文ではなくて、詩のような?一人称な言葉。女の人はあまり抑揚なくその言葉を話している。幼い感じの声。鼻にかかったような、なんだろ子音が良い感じnの声が良い感じ。話している言葉の内容をとらえようとして聞くのだけど、どうも言葉がとどまらない。すりぬけていく。話す言葉が速くなっていく。BGMが大きくなっていく。がんばって聞き取ってとらえようとするのだけど、どんどん速くなっていく。BGMもどんどん大きくなっていく。ロックバンドのバンドの音とボーカルの音くらいに。聞き取るのを諦めた。すると、言葉は音になって歌のような歌でないようなものになった。頭で見ていたのが体にゆだねた瞬間。

すごいスピードのそれはとても気持良くて。演者の人の声が良いのもあると思う。音楽のライブを見てるみたいな感じになっていく。ああ、なんかこの感じなんかに似てるなと思ったんだけど、井上陽水の歌を聞いてるときに似てる。言葉の意味がでしゃばらない感じ。

それでも言葉は言葉で、ときおり意味を持って耳にやってくる。意味が点滅するみたいに。ものすごく速くて何を言っているかわからなくても言葉は言葉で。意味から意識を逸らすようにBGMがあって、演者の動きがある。けど、体は反射的に言葉をとらえて断片で意味を拾う。ゆっくりになったとおもったら、さっきより抑揚のある話し方。ときどき話し言葉みたいに。すると言葉にぴたっと意味がくっついてするっと届く。意味を見せたり見せなかったり自由自在に操る感じ。

話す文の中には情景描写のようなものを、しっかりととらえられるスピードで話す部分もあった。女の子がお風呂のなかでおしっこをする話。銭湯とか信号とか女の子とかが出て来て、点滅するほど断片ではないもう少し大きなかたまり。けど、それもやっぱり全体をとらえられるスピードや話し方ではなくて、でもなんとなく銭湯と女の子とそのほか拾った言葉で組み立てた情景が浮かぶ。なんかそれは体が勝手に二次創作しているような感じ。

言葉に意味が宿るのはどういった条件のもとなんかな。スピードとか抑揚とかそういうものが言葉から意味を奪ってた。なんか言語学とかの本を読んだらわかるんかもしれないけど。なんていうか体にゆだねる感じでそれを体感できた。見終わって、なんか公演のスピードにひっぱられて帰りも自転車とばして帰ってしまった。

見て来たのは今日4月22日で、明日4月23日も同じく千日前味園ユニバースで公演があるみたいなので、まだ間に合います。http://mum-gypsy.com/


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