よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2014-08-24 02:38:20

【連載記事】ホットロード(藤井菜摘)

ホットロード 藤井菜摘

ホットロードが実写映画で公開になってる。映画は見てないんだけど、予告を見た。原作の漫画は、小中学生のころどっかしらで目にする機会の多い作品だった。本屋とか喫茶店とか友達の家とか。けど、読んだ事はない。不良っぽい少年少女が出て来る漫画のようだってことは知ってる。

不良とかヤンキーって存在を初めて認識したのは兄の友達のひろしだったと思う。兄が小学校の頃仲良くしていたひろしが中学校に上がってヤンキーになった。兄と5歳離れているので小さかった私は兄の真似をして同じようにひろしって呼んでた。親同士もわりかし仲が良かったし私も一緒に遊んだりしてたんだけど、当の兄達は中学校に入ると全く違うタイプの人間になっていったので関わりが薄くなってしまって、それ以来私も関わりがなくなってしまった。兄の卒業アルバムでは小さな眉毛と変形ズボンの立派なヤンキーになったひろしを確認した。

その次に出会ったのは、中学で仲良くなった友達のお姉ちゃん。お姉ちゃんは多分3歳くらい年上で、学校の先生によると相当なワルだったらしい。卒業式には真っ赤なハイヒールと真っ赤な口紅で現れて中川先生にどつかれたらしい。中川先生は野球部の顧問でムッキムキの男の先生だ。お姉ちゃんは中学を卒業すると高校には行かず、近所のスナックで働いていて、家に遊びにいくとリビングのソファーで寝てたりして、茶色い髪の毛とすだれ前髪がいかにもっぽい感じだった。

中学のとき塾で一緒になったやいちゃんは、勉強ができるらしく小学校のころはかしこいクラスにいたんだけど、中学にあがって同じクラスになった。何がきかっけだったか忘れたけど、何でか仲良くなって、出会った当時からそういう素振りはあったんだけど時間が経つにつれどんどんヤンキーになっていった。やいちゃんはわりかし早い段階からそういう世界に対する憧れみたいなものを口にしていて、本人にもその素養みたいなのは備わっているように見えた。なんていうか、そういうふうに変化していく同級生がいっぱいいるなかで、飛び抜けてそうなっていく子っていうのが何人かいて、やいちゃんはそういう子だった。中学3年のころには「なっちゃん、なんかあったらうちにいいやー、うちがしばいたるからなー」と舌ったらずの喋り方で言ってくれていたのを覚えている。

中学生になると、そういう変化をする同級生が出て来る。前髪が長くなってきて、制服の着方が変わって来る。上靴はかかとを踏む。どこかから先輩のお下がりという変形された制服を手に入れて来たりする。地元には二つくらい名の知れた暴走族があって、誰それがそこに入っているとか、どこどこ中学の誰がすごいワルだとか、そういうコミュニティーの情報を耳にする。コンビニの前にたむろしてみたりする。

私は臆病者なので、そういうふうな変化に乗り切れていなかったのだけど、さっきのやいちゃんみたいに、友達が徐々にそういう変化を遂げて行った子が何人かいて、結果割りと近くでそういう世界を見ていたように思う。乗り切れてはいなかったけど、そういうことに対する憧れみたいなのも私の中にもあったのだと思う。

ホットロードは読んだ事がないんだけど、表紙の絵は印象的で、あの頃の私の周りにいたそいう人たちのことを思い出すときはあの絵の感じとセットで。あの絵みたいにきらきらしてるってことでもないんだけど、読んだ事もないのになんとなくセットにして記憶してるってことは、なんかしら共通する部分があるんだろう。そういう人たちの記憶はけっこうな強度で一定量私の中に残っていて、思い出すのは割と楽しい。


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