よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2015-03-30 23:31:10

【連載記事】卒業式を見た(櫨畑敦子)

卒業式を見た 櫨畑敦子

縁あって小学校の卒業式に行った。
わたしは泣くつもりだった。
きっと泣くだろうと予想していた。

ざわめくあの子たちは浮足立ち
よそよそしく登校している。
いつもの顔、ちょっと大人びたような。



「卒業生、入場。」
いつもの豊かな表情、うるうる。

「卒業生、着席。」
ザッ(一斉に座る)。
ここから先に、あの子たちの笑顔はない。

「一同、起立。」
ザッ(全員一斉に立つ)。

「国家、斉唱。」
(一同、歌う)。

「一同、着席。」
ザッ(一斉に座る)。

「卒業生の言葉」
ザザザッ(一斉にフォーメーションが変わる)。
ザザザッ(一斉に定位置に戻る)。

「在校生の言葉」
ザザザッ(一斉にフォーメーションが変わる)。
ザザザッ(一斉に定位置に戻る)。

?一連の流れ?



途中から、言葉を失った。
白黒映画のように色を失っていた。

完全に誰もが、何もかも
誰かの思い通りになっていた。

式は滞りなく運び、最後までなんの問題もなく終わった。
結局最後までわたしは泣けなかった。

先生や保護者は感動していた。
ホッと胸をなでおろしていた。

ただただ恐ろしかった。
まるで軍隊のよう、いや、軍隊そのものだった。

ロボットのように表情は強張り、同じ制服に身を包んでいる。
靴下は予告された通り白で統一されている。

式が終わった後のあの子たちはいつもの顔をしている。
泣いていたり、笑っていたり、話したり、している。
そしてさわやかに、帰っていく。

誰かのために静粛に行われる、そんな式を見た。
ただ、それだけの話。

そう、それだけの話。


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