新刊検品;「浪華の古本屋 ぎっこんばったん」(坂本健一 著,SIC) 山本握微 天五中崎通商店街にある老舗古書店「青空書房」のご主人、坂本健一さんの著作。 直筆画つきの随筆集。 青空書房については、もっと詳しい人がいるだろうし、本についても読んでいないので、僕は何時か、青空書房で見た風景について書くことにします。 店のこじんまりさと、その硬派な品揃えと、意外な安さに吃驚して、店番をしていた奥様に話しかける。ご主人は不在だった。 奥様は笑顔で、この書店の老舗っぷりと、ご主人が如何に各所で信頼されているか、まるでアメリカ人がワイフ自慢をするかのように、ストレートに話しかけてくれる。その清々しい誇りに、長時間聞き入ってしまう。 そうしているうちに、ご主人が颯爽として店に帰ってくる。奥様は、ご主人に僕を紹介してくれる。ご主人が、また満面の笑みで、僕に挨拶してくれる。その挨拶の真っ只中に、奥様はすかさずブラシで、ご主人の髪を整える。 この「奥様にブラシで髪を撫でられながら挨拶する」という光景はちょっと印象的で、今でも焼きついている。 ちなみに、この書店の品揃えと安さの秘密は、大御所作家の蔵書や、やってくる献本が流れてくるからだとか。これもご主人の信頼のなせるわざ。 小さな古書店には珍しく、新刊雑誌が数点だけおいてあった(今は知らない)。ご主人、販促のためか、表紙の絵を、自分で描き写して軒先に吊るされていた。絵も趣味だったみたいだ。そうした味わい深い筆致は、挿絵としてこの本にも多数収録されている。 前書きを読んで、奥様が亡くなられたことを知る。