よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2010-08-29 15:59:47

【連載記事】新刊検品;「浪華の古本屋 ぎっこんばったん」(坂本健一 著,SIC)(山本握微)

新刊検品;「浪華の古本屋 ぎっこんばったん」(坂本健一 著,SIC) 山本握微

天五中崎通商店街にある老舗古書店「青空書房」のご主人、坂本健一さんの著作。
直筆画つきの随筆集。
青空書房については、もっと詳しい人がいるだろうし、本についても読んでいないので、僕は何時か、青空書房で見た風景について書くことにします。

店のこじんまりさと、その硬派な品揃えと、意外な安さに吃驚して、店番をしていた奥様に話しかける。ご主人は不在だった。
奥様は笑顔で、この書店の老舗っぷりと、ご主人が如何に各所で信頼されているか、まるでアメリカ人がワイフ自慢をするかのように、ストレートに話しかけてくれる。その清々しい誇りに、長時間聞き入ってしまう。

そうしているうちに、ご主人が颯爽として店に帰ってくる。奥様は、ご主人に僕を紹介してくれる。ご主人が、また満面の笑みで、僕に挨拶してくれる。その挨拶の真っ只中に、奥様はすかさずブラシで、ご主人の髪を整える。

この「奥様にブラシで髪を撫でられながら挨拶する」という光景はちょっと印象的で、今でも焼きついている。

ちなみに、この書店の品揃えと安さの秘密は、大御所作家の蔵書や、やってくる献本が流れてくるからだとか。これもご主人の信頼のなせるわざ。

小さな古書店には珍しく、新刊雑誌が数点だけおいてあった(今は知らない)。ご主人、販促のためか、表紙の絵を、自分で描き写して軒先に吊るされていた。絵も趣味だったみたいだ。そうした味わい深い筆致は、挿絵としてこの本にも多数収録されている。

前書きを読んで、奥様が亡くなられたことを知る。



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