よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2010-09-26 01:07:45

【連載記事】たこ焼き屋の庇(小田寛一郎)

たこ焼き屋の庇 小田寛一郎

先日、近所のスーパーで買い物をして帰る途中、帰り道にある一坪ほどの敷地のプレハブ小屋のようなたこ焼き屋に寄りました。すでにおばちゃんがひとり待っていて、10分くらい待ってもらうけどいいか、とのこと。いま焼いているのはおばちゃんの分。別に急ぐ用もないので、待つことにして小屋の前のベンチに座る。一年くらいまえに出来たたこ焼き屋で、元はなんだったか、空き地だったような気がします。川沿いで、その川にかかる橋の横。バス道に面しているのでバス停も近く、スーパーも近い。小屋に庇がついていて、庇を支える支柱がなにかのパイプのようで、サイズやらなんやらの規格がプリントしてあり、庇じたいも土嚢のビニールのような素材。気になったのでおじさんに、この支柱は?と聞くと、おお、それね!水道のパイプなんですわ。すぐそこのロイヤル(ホームセンター)に売ってるやつ。角のジョイントもあるしね。とのこと。続けて、(庇を支える支柱の)パイプがささってる金具あるでしょ?これ旗たてるやつなんですわ。これに気づいた時はうれしくてね。とのこと。出来すぎちゃうか、とまで思ったらしい。この前は別のお客に、庇部分のパイプのたわんだカーブがいいですね、と言われたらしいが、それは勝手に重さに負けてたわんでるだけで、なんとかほめようとしてそこしか思いつかんかったんちゃうかな、とのこと。改めてその庇について説明すると、お店の建物の幅に合わせた長さのパイプが2本、それより短いパイプが2本、計4本をジョイントで繋いで土嚢みたいなビニールを張った横長の長方形の庇があり、その庇がどのように固定されているかというと、庇を構成する長い方のパイプの1本が屋根近くの壁についたフックのようなものにひっかかっていて、庇を構成する短い方の2本のパイプの屋根近くの壁から30センチくらいのところに金属のジョイントでそれぞれ支柱のパイプが固定されていて、その支柱のパイプがお店の壁についた旗を立てる用の金具にささっています。

たこ焼き屋のおじさんは、こういうのプロに頼むと高いやろ、と言いつつも、お金の問題もあるとはいえ、「工夫」を楽しんでいる感じがあります。この庇はすべてが「転用」でできていて、その転用のなかでいちばん鮮やかなのが、おじさんも言うとおり、旗を立てる用の金具を支柱を支える(建物の壁に水道パイプの支柱を固定する)金具として使ったことだと思います。庇を壁と支柱で支えるには「角度」がいるのですが、旗を立てるのにも「角度」が必要で(まっすぐ立ててしまうと風がない限りだらしなく垂れ下がります)、旗用の金具には角度がついています。また、旗をつける棒と水道パイプはどちらも「棒」状です。

おっ、こうしたらうまくいくんじゃないか?!とか、おっ、これはこうにも使えるんじゃないか?!というような思いつき、工夫は、人間に独自のものなんじゃないかと思います。もちろん人間以外にも、棒をつかって魚をおびき出す鳥や、棒をつかってアリを食べるアリクイや、くるみを車に轢かせて実を食べるカラスなどもいますが、自分の作り出した道具をさらに転用できるのは人間くらいだろうなと。それゆえ、その「工夫」の嬉しさ、喜び、というのは、人間に必要なものなのかなと思います。


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