よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2010-10-12 09:44:18

【連載記事】草間さかえの描くところ(永田芳子)

草間さかえの描くところ 永田芳子

大型古書店で、ずいぶんこのテの本が増えたなぁ、流行ってるのかなぁとBLコミックの棚を横目に歩いていたらひときわ地味な色合いの表紙が目にとまった。
「はつこいの死霊」という。興味を引いたので読んでみた。


小説にしろマンガにしろ恋愛物をあまり読んでこなかったので、そういう意味では良いのかどうか分からないが、なかなかトリッキーな話で面白い。なにより、この人の描く家が気に入った。
自分は今まで文化住宅やマンションといったシンプルな間取りの家にしか暮らした事がないので、一風変わった住居に憧れがある。このマンガの主人公はビル群の間にぽっかり取り残された集合住宅に1人きりで住んでいて、出入り自体は縁側からしている。正規の入り口らしい箇所もコマによっては描かれていて、その梁がアーチになっているのだ。こういうのにとても弱い。
例えば新梅田食堂街にあるYCという喫茶店によく行くのだが、その理由の半分は店のなかを横切るアーチと、変な造りに惹かれてのことで、まあ、それぐらい弱い。
作中、人物と同等の描線で表わされる家具や部屋の散らかり具合もかなり好みで、あらためてページごとにしげしげ眺めていると、ある日、本棚のところに「よくわからないネジ」が1本描かれているのを見つけて頭が冷えた。これは、いくらなんでもちょっと変だ。


作者は一体どういう人なんだと思ってインタビューを探して読むと着眼点が独特なようで、昔の革が鋲で留めてあるタイプの理髪椅子が描きたくて短編を1本仕立てたり、理容ハサミのベアリングについて語っていたりする。人物を立たせる背景のために、最初は地図を書くそうだ。


ネジで驚いてからというもの細かく見る癖がついた。その後も単行本を全部そろえてしまい、よく読み返すのだけれどもその度になにか見つけてしまうのではと思ってしまう。9月に出版された「地下鉄の犬」で、それほど大きくもないコマに脇役の女性の足元がでてくるのだけれど、そのパンプスのつま先、足の指が長いのか、甲革から付け根がすこしだけ覗いている様を発見したときにはなんと言っていいのか分からない気持ちになった。そして家には坪庭がある。


余所見