よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(244版)
2017年6月23日 17時14分31秒 発行

連載記事 

掲載日:2017-06-23 17:14:31

【連載記事】もちかぶ(山本握微)

もちかぶ 山本握微

 田中さんは小さい頃からお菓子を作るのが趣味で、大人になって実家のガレージを利用してお菓子屋さんを開きました。毎朝、早起きして近所のスーパーに行って食材を仕入れ、台所でお菓子を作り、お店に並べます。「おかしの田中」という看板を作って軒先に立てました。大層な評判で、お店は大繁盛。スーパー買い出しでは間に合わなくて、業者と契約して日々食材を配達してもらうことにします。お店も2号店、3号店と増えて、工場と販売所をわけることにしました。従業員もたくさん雇いました。と言った按配で、多額のお金を様々なところと遣り取りするようになったので、各専門家と相談して、お店を株式会社として立ち上げます。「田中製菓株式会社」の誕生です。経営は順調で、工場も店も日本に留まらず、世界各地に。その過程で系列子会社も沢山できました。それらを効率的に統制するために、事業は全て子会社に分配し、最初の会社である田中製菓株式会社はそれら子会社の株を保有する、所謂持株会社となりました……。

 ……という話があったとする。最初は田中さんの趣味であったお菓子作りが、仕事になって、会社になって、どんどん発展していく、というもの。田中製菓株式会社という、巨大な会社になっても、それは田中さんの趣味からはじまる思いの結晶、その発展、「おかしの田中」の後継に違いない。しかし、最終的には田中製菓株式会社それ自体は「持株会社」となり、遂にお菓子を作らなくなる(!)。
 この流れに区切りを設けるなら、趣味が仕事になった瞬間でなく、個人店から株式会社になった瞬間でなく、田中製菓株式会社が持株会社になる瞬間、としたい。
 人が行う事業を、より社会的に円滑に進めるために株式会社の制度を作り出したとして、しかしその制度を突き詰めていくと、制度によって事業を行わない会社が生まれる……。概念の「のりこし」の一種一例でしょうか。

 もちかぶ……名前からしてヘンテコリンだ、と思っていたけど、ああ、よく聞く「ホールディング」って、ホールドしてる、持っている、って意味か。なんか、大きな会社につく名称だから、何と言うか、立派なホールを持っている感じだと思っていた。屋号に「何々堂」みたいな、建築が末尾につく、みたいな感じだと思ってた。そんだけ。


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