よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2015-08-21 05:05:03

【連載記事】謎水分(藤井菜摘)

謎水分 藤井菜摘

蝉が大の苦手で、この間その話を友達にしていたら、どんなところが嫌なのかみたいな話になって。鳴き声がいやなのか、姿がいやなのか、死んでいるやつはどうなのか、などなど。それで、「じゃあ、蝉のおしっこなんてかけられたらすごくいや?」と聞かれたので、私は少し考えて「うーん、それはでも空から水分が落ちて来ても蝉のおしっこかどうかわからないし、ていうか、なんか道歩いてると謎の水分落ちてこん?」と答えた。すると友達は「あるある!今日も駅から歩いて来る途中なぞの水分顔にあたった!」と答えた。

私が言う謎の水分っていうのは、前日雨だったとか今まさに雨が降りそうとかそいう雨の気配がないのに、なぜか街中でふいに顔にあたる水分のこと。雫にもみたないようなほんとに顔にあたったのか気のせいなのかさえも確認できないような水分の粒。その、ときどき顔にあたる謎水分は確認の術もないし、そもそも気のせいかもしれないし、ていうかその程度の小さな小さな衝撃だから自分のなかでも意識するでもない無意識に近い位置にある事柄で。わざわざ言葉にして表に出すほどのことでもなかったし、ましてや人に話すことでもなかった。それがたまたま話の流れで表にでてきて、しかも人と共感できてしまって。そのときの、表に出るはずじゃなかった事柄を言葉にするふいの生っぽさとしかもそれを人と共有できてしまった快感がなんかこそばゆい気持良さっていうか。ちょっと不思議な感覚で。

無意識に考えていることを意識的に探してみて言葉にするようなことは、何か考えを深めるときなんかにはよくやってみる方法だけど、とりわけこんなふうに表に出しても特に意味のないような事柄は、表に出て来る可能性は低い。そんなのがぽいっと出て来て、無防備なまま共感出来たのがなんかとてもよかった。


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