丸くて透けててぐるぐる 永田芳子 写真のガラス玉はハンドメイド・マーブルと呼ばれている。あまりにハイカラだったので手頃で売られていたときに少しずつ集めた。いつごろ製造されたものかは分からない。 ハンドメイド・マーブル(以下、マーブル玉)には陶や石のものもある。中でも人気が高いのはガラス製だ。当初は子供のおもちゃだったが、年代を経てコレクターズアイテムとなった。現在では国内外のガラス作家が美術工芸として制作したりもする(いわゆるビー玉、ラムネ玉にも愛好家がいるが、またちょっと違う世界のようなのでここでは省く)。 マーブル玉のムック本を見ていると、洋書なのできちんとは読んでいないが、意匠や中の具によって名前があるらしい。例えば、外側に色ガラスの筋が巻いているものはSwirl、白いレース状の具はLatticino Core、銅などの金属粉が使われたものはLutzといった具合に。他にも、材質や地になるガラスの色などでそれぞれ分類されている。ちなみに、写真のはLatticino Core Swirl、Solid Core Swirl、Divided Core Swirl、Coreless Swirlの4種と思われる。多分。 こういう名前はいつ付けられるんだろうと思う。一説ではガラス職人が余ったガラスを使い、自分の子供へのおみやげとして作ったのが初めらしいので、いちいち名前はなかったんじゃないかと想像する。 「前作ってた、なんか、ぐるぐるしたやつってどうやったんだ」 「ネジネジのあれか」 「いや、ネジネジっていうか、なんかこう、ふわっと」 要領が悪い。あげく口ベタ同士だったりした場合、現物持ってくるなり絵を描くなりしない限り、一致までにはほど遠いだろう。こんな会話はなかったにしても、いつかのアレ、という状況になったとき、何らかの「アレ」を指す名前が必要になったんじゃないか。 また、その名前がどういう経緯を経て共有されたのかも気になる。 「隣の工場な、このミチッとしたやつをソリッド・コアって呼んでるらしいぞ」 「え、そんなん言ってるのか。じゃあ俺たちはこのネジネジしたのを今日からディヴァイデッド・コアって呼ぶぞ」 「よしきた、教えてくる」 あくまで想像なのでそんな負けず嫌い的な展開ではなかろうと思うが、というか、私の頭の中では「村に古来からなんとなく伝わる漬物を作り続けている名人とそれを商品化したいバイヤーの攻防」が展開しつつあるがキリがないのでよす。