よそみ余所見

余所見は、見たり聴いたりした事と、それについて考えた事などを書くウェブサイトと紙の雑誌です。

第1号(249版)
2017年10月19日 16時40分33秒 発行

連載記事 

掲載日:2012-05-27 23:38:31

【連載記事】戦争の話(小田寛一郎)

戦争の話 小田寛一郎

何ヶ月か前、うちのばあちゃんが入っている施設(介護老人保健施設)にて、ばあちゃんが布団に入るのを見届けてさあ帰ろうかというとき、ひとりのおばあさんを職員さんに紹介されました。このおばあさんがぜひ私と話したいとのことで、最近この施設に入ってきたとおぼしきおばあさん。私とうちのばあちゃんとのやりとりを見ていて話をしたくなったそうで、しばらくこのおばあさんと職員さんと私の3人でお話をしました。

主に戦時中の話で、長崎・大村の工場に学徒動員で行って、兵器をつくっていたこと。そこに戦闘機が飛んできて、機銃掃射をするために低空飛行をするのだけれど、そのとき戦闘機の風で竹林の笹がざわざわっと揺れたこと。裸足履きの下駄で4里(約15.7km)の道を女学校まで通ったこと。食べ物がなく、大豆の絞りかすを少量の米と一緒に炊いたものを食べたこと。機銃掃射で亡くなった同級生を弔うために、女学校の見える場所に石碑を建てたこと。本当は先生になりたかったのだけれど、戦時中のことでなかなか思うようにいかず、周りに気兼ねもしたりして、先生になるための学校に行かなかったことを今でも後悔していること。子どもは5人、孫は10人。などなど。おそらく認知症の影響かなと思いますが、それぞれのお話を3回か4回ほど繰り返して話されました。繰り返すときの内容はだいたい同じですが、ちょっとだけディテールが違うことがあったりして、そういう時は前回よりも詳しく思い出したのかなと思います。話すエピソードの順番も特に決まっているわけではないようでした。

また、時々、一代記を書いてみたいと思うことがあるそうで、ぜひとも書いてくださいと言いました。あと、書くのは大変かもしれないから、こういうふうに誰かを相手に話してもらったことを録音するといいかもしれない、ともお伝えしました。このおばあさんはほんの一時期だけ施設に来ていたようで、今はもういないようです。また、一代記が書き上がるかどうか(そもそも書き始めるかどうか)も定かではないので、私が聞いた限りのことをここに記しておこうと思います。


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